取り出したのは、鞘に収められた短刀やった。私が驚いたのは柄の部分。
そこに草薙家の家紋が入っていた。
「…!?…あんたソレッ!?」
「小夜子様ならお分かりになるはず。これは京都にある草薙家御用達の刀師が作ったもの。草薙家以外の者が家紋の入った刀を手にすることは出来ません」
「っ!」
「私はこれを尊様より賜りました。これこそ私が草薙家の密偵である証拠です」
乃愛さんはゆっくりと鞘を抜いた。
私はこの時、すっかり忘れとった記憶を思い出した。
あれは嫁にくる日のことやった。
『花嫁道具にな?短刀入れといたわ。いざっちゅうとき、これが朔夜を刺して、小夜子を守るから……』
兄ちゃんは私にそう言ったんや。けど、小刀なんかなかったから、てっきり冗談やと思って忘れとった。
けど、こういう意味やったんかいな……
尊兄ちゃん……!?

