「それも正体を隠すための芝居。ほかのお方様たちに合わせていただけ。敵を欺くにはまずは味方から、です。お許しを」


「お、お、お許して…ッ!?」


身体がプルプル震えてまう。そんなこと急に言われても信じられん。しかもなんか高飛車やし!


けれど乃愛さんは適当に話を切り上げる。


「さ、"あの男"に見つかれば厄介です。脱出しましょう」


「待って!ちゃんと説明して。ホンマにあんたを信用してええの?」


私を支え立ち上がろうとした彼女の手をどけた。まだ半信半疑やったから。


「小夜子様、これは事実です。私の一族は代々草薙家に支えて来たのです。私も幼い頃より武術の訓練を受けて、裏の仕事を請けおってきました」


「……つまりスパイみたいな?」


「そうです。いざとなれば刺し違えてでも小夜子様をお守りします」


「な、なにを言うてんの…」


乃愛さんの声がいつになく重い。


「火事の夜、私は小夜子様をお守り出来ませんでした。もしこの上、あなたの身になにかあれば、どのみち私は尊様に殺されます」


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