そう思って、肩にまわした手にぐっと力を入れた時や。


お兄ちゃんが呟いた。


「堪忍やで小夜子」


「……!?……えっ?」


お兄ちゃんはそう一言いったきり、あとは何も言わなかった。けれど、それが今日の結婚のことなんやとはすぐにピンときた。



お互いの鼻がくっつきそうな距離で見つめ合った。すると、お兄ちゃんの気持ちが伝わってきた。


分かってる。
分かってた。


お兄ちゃんに、この結婚を中止させる気持ちなんかサラサラない。


気づいたら叫んでいた。


「分かってるよ!『大倭会』を守るため、御劔組組長との結婚は絶対に必要なんやろ?もしうちの組織がむこうと戦争なんてしたら大変なことになる」


「うちの組織にとって唯一、目の上のたんこぶなんは御劔組なんやろ?その組長、西園寺朔夜!そいつを抑える為の結婚やろ?分かってるよ!」


これはずっと父親に言われ続け、耳にタコができた話しや。つまり、これは戦国時代で言うところの政略結婚。


そして私は御劔組への人質。


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