「離婚?」


反芻する鬼塚さんとルームミラー越しに目が合った。


「そう。あ、でもな、言い出したんは旦那さんやで。今日そう言われたの!」


「ああ……"犬も喰わない…"(夫婦喧嘩)っていう、アレですか?」


「そうやない!……そういうことやないよ。そもそも旦那さんかて、好き好んでうちと結婚したわけやないろし」


「………そうでしたか。私にはよく分かりませんが、それで元気がないんですね」


元気がない…?


鬼塚さんから見てもうち元気ないんやろか?朔夜と離婚、したくないんやろか?


尊兄ちゃんも朔夜も、離婚やて言うてる。大倭会と御劔組トップの意向や。なら続ける理由なんか一つもない。


これが結婚当初なら私は飛びはねとったと思う。


なのに今は………。


黙りこくると、鬼塚さんが沈黙を破った。


「しかし、そんな筈はないと思いますがね。私が見るかぎり朔夜様は小夜子様を、それはそれは大切に思われてますよ」


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