だからって、行くところもなく、公園のブランコで揺られてると……


雨が降りだした。



他人だらけのあの屋敷。指の欠けてる怖そうな厳つい男の人たちも、みんな私に笑顔を向ける。


けどそれは本物の笑顔やない。
私が"あの男"の娘やからや。


けどオトンと思えるよう優さを向けられた記憶はない。私のことなんて、組のための駒やとしか思ってないんや。


オカンも私が小学校に入るころ、自殺してもういない。長いあいだ鬱病を患ってた人やった。


家族っていえる思い出の一つもない。


みんな仮面をかぶってるだけで腹んなかで何考えてるかよう分からへん。誰も信用できひん。


そんななか、私をひとりの人間として見てくれたんは、尊兄ちゃんだけやった。


いつも私の誕生日を心から祝ってくれるんは、世界でお兄ちゃんだけや。


お兄ちゃんが好き。誰よりも… 妹でもなんでも、傍におれたらそれだけでええのに。


……助けて、兄ちゃん。




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