「好きでもない男と組のために結婚したんや。せめてそんくらいでも小夜子のこと守ってやらなアカンと思ってな」


「兄…ちゃん」


「それにさっき鬼塚が言うた事も、半分は当たってる。俺は隙をみてお前を奪い返すつもりやった」


「……ホンマ!?」


「ゆうても放火はしてへんけどな」


なんや最初からそのつもりでいてくれたんや!うちはてっきり兄ちゃんに見捨てられたんやと思ってた!


「小夜子のことは一日でも忘れたことないよ。あの冷酷な悪魔とおるんか思うと、気が変になりそうやった。

けど一目でも小夜子の顔みたら、連れ帰ってまいそうで簡単には会われへんかった。すまんな…」


兄ちゃんと目が合って、頭の芯がポーッとのぼせたてしまった。


「もう小夜子に辛い思いはさせへんからな。一緒に帰ろう」


「………!」


この言葉を嫁にきた日に言うてもらえてたら、私は兄ちゃんに飛びついてたと思う。


でも今の私は、あんときの自分となんかが違う。


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