兄ちゃんが刃のような目で凄むと、鬼塚さんは唇を噛んで表情をかえた。


「……なるほど。最初からそのつもりだったと言うわけか」


「どーいう意味や?」


「なんやかんやと理由をつけて、結局はぶち壊すつもりだったわけだ。縁談をただ蹴ったら角が立つし、利益がない。だから何かしらこちらに失態を犯させて、莫大な慰謝料をもぎ取るハラだったんだろう?」


「………言うやないか」


「この放火騒ぎは、まさに絶好の大義名分。おまけに組長の朔夜様まで深傷を負い、大倭会は笑いが止まらんだろう。アメリカ帰りの若頭はやり手だとは聞いていたが、最初からすべて計算ずくだったとは恐れ入った」