その表情を一目見て、尊兄ちゃんがもたらした用件が、朔夜にとって良いものではなかったのだと直感した。


いつもと同じ、シトラスの香りを纏った朔夜は、猫のようにしやかで無駄のない仕草で腰をおろした。


人形を思わせる白い肌と端正な顔が、怖いくらい綺麗で、思わず息をのんだ。


さっきまでは訊きたいことだらけでウズウズしてたのに、なぜか言葉がでなくなってしまった。


するとしばらくの沈黙の後、口を開いたのは向かいに座った朔夜だった。


「なんか言いたそうな顔だな?アイツがお前に会わないで帰ったことが不満か?」


「……尊兄ちゃん、やっぱり来たんやな?」


「知ってるくせに」


「二人だけでなんの話してたん?」


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