そして、開演した。たくさんの吹奏楽部の方々が入場してくる。だが、思わず目線はSさんの方へと………。
(いた!Sさんだ!いつもとは違うな~。)

会場が静かになり、司会者が現れる。
「ようこそ、I高校吹奏楽部定期演奏会へ。どうぞみなさん楽しんでお聞きください。」
司会者一礼をしステージ裏へ。そして指揮者が入場をし、指揮棒を構える。
(どんな演奏だろう。楽しみだ。)

指揮棒が下ろされる。迫力のある音色が開場十に響き渡る。心に響く、綺麗な音色…。
僕はSさんを見た。だが、そこにいたのは僕の知るSさんではなかった。1人の演奏家としてピッコロを奏で輝く少女がそこにはいた。少女は眩しくとても美しかった。
そして、僕は気づいた。僕はSさんに恋をしていたと…。きっとこの気持ちはもっと前からあったのだろう。ようやく分かった。僕は輝くSさんのそばにずっといたいのだと。
思えば思うほど、思いが強くなっていく。
Sさんは他のどの演奏家より輝いていた。