ぎゅっと目を瞑ると、身体にのしかかる温かい体温。
神様、有難う。
お姫様は王子様のキスで、深い眠りについた女子力を目覚めさせるのですね。
胸の高鳴りが速くなり、止まらない。
まるでものすごく重たい蒲団を被ったような息苦しさが……。
……息苦しさが?
「くっ……くるしい……」
少しも色気のない感覚に目を開けてみると、悪魔は見事に私にのしかかったまま動かないでいる。
「……俺、マジで風邪引いてんだって……」
ああ、そうだ。あまりの事に忘れていた。
コイツ、風邪引いてたんだった。
「ベッドまで運んで……」
「すみません、風邪のこと忘れてました」
「馬鹿野郎が……」
よっこらせ、とまずは自分が立ち上がり、それから悪魔に肩を貸して立ち上がらせる。
小奇麗に整えられた寝室に運んでベッドに寝かせると、悪魔が苦しそうに呟いた。
「お前が、買ってきてくれたの、持ってきて」
――ああ。
そんな殊勝なことを言われたら。
「……分かりました。台所、借りますよ」
仕方なさそうな風を装って、私は寝室を出てドアを閉めた。
そのまま閉めたドアにもたれ掛って、小さく息を吐く。
「……ちくしょう、萌える」
最悪だと思ったクリスマス。
少しだけ、ほんの少しだけ、ご褒美を貰えたような気持ちになった。
やっぱり私は真性のドМらしい。
「早くしろよ、薬飲めねぇだろ!」
「ハイッ! ごめんなさいッ!」
数日後、私が見事に高熱を出したことは言うまでもない。


