「た……高崎さ……」
状況が理解出来ない。
玄関のドアに手を着いた私の下に、悪魔が居るのだ。
そして、尻餅をつくような体制でドアにもたれ掛っている悪魔の上に居る私。
図らずしも、マウントを取るような格好になってしまっている。
どういう状況だこれは。
ぐるぐると思考回路を巡らせていると、今度は突然肩に強い力を感じ、体勢が後ろに向かって崩れていく。
考える暇もなく、私の背中に硬い床の感触。
視界の暗さに思わず目が眩んだ。
「た、たかさき、さん……? これはいったい……」
どうやら私の顔を挟むように両手が置かれているらしい。
真上に見える悪魔の顔に、ニヤリと意地悪い笑みが浮かんだ。
「床ドン。俺のマウント取りやがった仕返しだ」
言いながら、整った顔が近付いてくる。
『押し倒す』の別称は床ドンと言うのですか。
この距離は、マズくないですか。
いきなりどうしてそういう事になるんですかっ。
私は貴方の部下でパシリで奴隷でそれ以上でも以下でも無いんじゃないんですか!
でもこの高鳴る胸の鼓動は一体何なんですかッッ!!
もはや仕返しと言うよりご褒美です有難うございますッ!!
「高崎さんッ! マズいですってば! 私そんなっ……!」


