痛いところを突かれて、言い返す言葉も出てこない。
確かに女子力とやらは年々低下しているが、何もそんなにハッキリ言うことも無いではないか。
私は休日出勤の後にそれなりに急いでやって来たつもりだし、苦しめばいいとは思っていても少しは心配していたと言うのに。
「せっ……せっかく来たのに何ですかその言い草は! もういいです、返して下さいそれ!」
悔し紛れの勢いに任せてそう言って、袋を奪い返そうと手を伸ばす。
しかし悪魔は取られまいと袋を高く掲げて、もう片方の手で私の手を遮ってきた。
「いいよ、これで!」
「何ですか、『これで』って!」
さほど広さの無い玄関先で攻防が続く。
あちらこちらと体制を変えていくうちに、私が室内側になってしまった。
「やばっ……」
自分が土足でフローリングに上がり込んでしまっている事に気づいて、慌てて玄関へ降りようとしたその時。
足がもつれて身体が前方へよろめいた。
「うっきゃあッ!」
ドサッという地味な衝撃が身体に伝わる。
間一髪で玄関のドアに手を着いて顔面ダイブを逃れた私は、小さく溜め息を吐いて安堵した。
「……この俺に壁ドンたぁいい度胸だな、オイ」
ふと耳元で聞こえたハスキーボイス。
暖かい息が首筋をくすぐる感触に、私は固まったまま視線を下へ移動させた。


