「 俺、幽霊部員ってことで 」

「 は? 」

「 面倒だし 」





昨日の会話を思い出すと
やっぱり腹が立ってくる。


「 マミ、移動教室なんだから
早くしないと置いてっちゃうよ〜 」
「 あ、うん… 」


ひとりで少し苛立っていると




「 相澤、顔こえっす 」
「 水嶋先輩! 」


丁度、1年生の教室前を通ったらしい
水嶋先輩が、わたしの頭にぽんぽんと
手を乗せ、ふわりと笑う。

先輩の大きな手が、すごく
安心感があった。


「 そんな顔してると
いつまでたっても彼氏できねーぞ 」


にかっと笑い、満面の笑みを見せた。
くるくるとハネた黒髪が揺れる。



「 彼氏なんていりません! 」

ムキになって言ったけど、
わたしの顔はたぶん赤い。



「 ハハ、うそうそ。
ま、相手がいないときは俺かな♪ 」

その言葉に、少し喜びつつも
この気持ちは閉じ込めて…。



「 嘘言ってないで! 次移動教室
なんですよ? 遅れますよ〜 」



そう言うと、水嶋先輩は
焦りながらも きちんとわたしに
手を振って走り出す。




ほんと、やさしいな…。
水嶋先輩は…。





午前中の授業をすべて終わらせると
わたしは友達と昼食。

わたしと1番仲の良い友達、
トモミがいつも話題提供する。




「 そういえばマミ、さっきの授業前
水嶋先輩と話してなかった? 」


トモミの一言で
友達全員がわたしを一斉に凝視する。


「 ちょ… なになに、べつに
付き合ってるとかじゃないんだしさ 」

「 なーんだ、んじゃ安心〜 」
「 水嶋先輩、学校1でモテモテかもね 」
「 そんな人がマミにとられたら… 」



なんて勝手に話始めてる。

わたしで届くような人じゃ
ないでしょ、先輩は。



自分でもなんとなく気づいてはいた。

まだ入学して 少ししかたってないけど
天文部で水嶋先輩と知り合って…。



話だって毎日するわけじゃないし
そんな親しいわけでもないけど。

好きなのかな…って。
水嶋先輩のこと。




ま、かっこいいし、性格もいいし。
モテて当然の人だから、わたしには
手が届かない。




「 なーに深刻な顔しちゃって〜 マミ〜 」

「 や。たしかにモテるな〜って 」


へらへら笑って見せると、
友達は私の気持ちに気づいてない
ようで。