あれから10年。


わたしは無事、志望校に合格し
入りたかった天文部にも入部した。




「 水嶋先輩、これどこに起きますか 」
「 あ、後ろの棚の横によろしく 」


入部して思ったのは、部室の汚さ。
なにしろ、わたしが入部するまでの間この天文部には部員が 水嶋先輩ひとりだけだったらしい。

だから掃除が行き届かなかった部室を
水嶋先輩とふたりで掃除中ってとこ。


キィ…

扉を開けて入ってきたのは、先輩のクラスメイトと思われる男子の先輩。

染めたであろう明るい茶色の髪を、片手でくしゃくしゃと掻く。


「 雪、担任の武田がお呼びだぜ 」


と、呆れたように言う。

そうだった、と言わんばかりの表情で天然パーマの黒髪をふわふわと揺らしながら部室を後にする水嶋先輩。


「 あいつ色々やらかすこと多いからさ
担任に呼ばれて部活来れない時とか
多いだろうけど、よろしく頼むよ 」


茶髪の先輩はそう言って、困り気味に笑ってみせた。


「 俺、酒井誠。
雪と仲いいから 天文部来ること多いかも

そんときはよろしくね 」


酒井先輩はそれだけ言い残して
部室から出ていった。

見事にぼっちになったわたし。


「 ま、掃除してれば 先輩戻ってくるか 」


そう呟いて、ひとりで部室の掃除を
再開した。