「美容師の勉強は、大変?」
僕は、コンビニの目の前の、ショッキングピンクで、彩られたラーメン屋のラの字の上の線が、消え、フーメンになった看板が、切なそうに点滅しているのを、ボーと、見た。
「大変だけれど、なんとか、なってる。そっちは?」
彼女は、目を細め、半端な闇から、顔の影が、一番素敵な角度を、演出した。
僕は、
「勉強、身に入らん。これほどまでに、自分が、ゆるかった、なんて。」
彼女は、
「私も、そう。気を引き締めるとか、苦手。」
僕は、油断した猿が、木から滑り落ちる感覚に、襲われながら、
「今、ヒマなら、二人で、落ち着けるところに、行かない?」
と、いっているそばから、彼女のスマートフォンが、急かすように、その着信音を、鳴らせ、彼女が、スマートフォンの相手。
そして、
「彼氏に、呼ばれた。駅まで、これから、行く!あっ、なんて、いった?」
と、いうので、
「今、ヒマなら、フタあけて、落ち着いて、これ飲む、イケてる。と、いったんだ。マミー、うまいから。」
彼女は、ふに落ない表示を、したが、
「じゃ、またね。」
と、駅に、向かって、歩き出した。
彼女が、優しくも、臆病な街灯に照らされ、小さくなるのを、見ながら、思う。僕は、時間が、ありすぎる。余裕の無い狩人に、なれない。
せめて、自分の小さい畑で、最高傑作を、収穫するぞ!
自分に、不思議な慰め方を、して、俳句を一句。
[ 女だけ とどかないから 神の旅]