蜩達がそおっと眠りに落ち、夕闇は星明りに変わり始める浜辺の見下ろせる海岸公園で、僕は夏恵を貪る。

ため息の様に吐いて出る声を耳元に感じながら、時折夏恵の吐息が僕の耳や頬や首筋を撫でる。

優しく海から吹いてくる少し潮の香りのする涼しい風を僕は感じる事は出来なかった。おそらく夏恵もそうであっただろう。

二人が今感じている温度はお互いの体温だけであって、下手をすると熱く感じるのは自分なのか相手なのか、その識別さえ無意味であった。

無意味と言うよりも、そういった事を考える必要は無かった。


溶け合う

そう言った言葉が一番相応しく思う。

僕は海を背にして夏恵と激しく溶け合った。