『すみません・・・私の方でこれから郡山まで行きますので・・・会えませんか?』


『安西さんでしたよね?』


『はい』


『すみません・・・安西さん。・・・夏恵と話したいのですが?』


『ナツエ?・・・ナツエですか?』


『はい・・夏恵は?』


そう言うと安西は暫く沈黙して『取り敢えず会って頂けませんか?』と言ってきた。

僕は突然夏恵の携帯から掛けてきた安西と名乗る男に不安を覚えずにいられなかったが、それ以上に夏恵の状況が知りたい欲求が強かったのだろう、僕は疑念や心配を他所に男の提案を承諾して、自分がいわきに居る事を告げた。


僕はいわきの事をよく知らない。

男もいわきの地理に疎かった。

僕は思い当たる場所もなく、夏恵と初めて話をした駅前の喫茶店で待ち合わせた。

僕は男より早く着いた。

男を待つ時間は永く感じた。