『救急車だ!!早く!!』


僕の声は雨にかき消される。

 須藤は近くの総合病院に救急車で慌しく運ばれた。

僕は自分の車で救急車を追う様に病院に駆けつけたが、救急外来から須藤が何処に運ばれたのかを見失い、迷子の子供の様に怯えた様子で病院内を探し回った。

処置室を見つけた時には既に須藤の処置が始まっていたらしく。

処置中のランプが点り看護師がガラガラと医療品の詰まったカートを押しながら慌しく出入りしていた。

救急車が来るまでの間、須藤の傍らに頓挫し、須藤の喉もとからかすれた様に出てくる紙やすりの様な声に僕は酷く怯えていた。

救急車が現場に着いた時に初めて僕は自分を取り戻せた。

そして病院に着いた今でも緊急処置中の須藤のかすれた声が耳元で響いている様な錯覚を覚えている。