浴場はうっすらと湯煙が立ち、明かりが点いていない為か月明かりと星の光が迫って来る様に近く感じた。

幻想的と言ったら笑われるかもしれないが温泉街を一望出来るココは見下ろしても、見上げても、星空の様だった。


『貸切だね・・・』


そう言って明子は湯船にゆっくりと身を沈めた。

お湯はヌルくも無く、熱くも無く、何故調整中だったのか不思議な程だった。

ただし明かりも無く温泉街の喧騒も響いて来ない広い露天風呂は少し僕を不安にさせた。

時折触れる隣に居る明子の肌だけが僕を安心させた。


『・・・なんか真っ暗だとやっぱりちょっと怖いね。』


『あぁ・・・静かだし。』


月は闇の中にぽっかりと浮かび、夏の喧騒を全て吸い尽くし輝いていた。

お湯が湯船からこぼれ落ちる音が響くのみで、耳鳴りがしそうな程静かな夜だった。