僕は海の方をもう一度振り返り、紅く染まる海と空を眺めた。

東の空からゆっくりと音も無く青い闇が押し寄せていて、西の空に戻る太陽が放つ最後の光が紅く尾を引いている様に広がり、海と空の境界線は綺麗な紫色に染まっていた。


『・・・綺麗』


明子がタメ息の様に言葉を吐いて海を眺めた。

僕はただ黙って頷き海を眺めた。


僕は心の中で姉に父と母の事を伝えた。そして別れを告げた。

小波は優しく語り掛ける様に響いた。



『・・・これココでいい?』


明子は綺麗に折り畳んだ包み紙を見せながらダッシュボードを開けて言った。

僕は浮き輪を空気を抜かないままトランクに放り込み、運転席に戻り煙草に火を点けながら『ああ・・そこでいいよ』と明子に言った。

辺りはすっかり夕闇が広がり、先程より少し暗さが増していた。