――チチチ。と。
 鳥のさえずりで、わたしは起きた。
 ずっと前なら億劫になる朝も、沈んでしまえと呪った太陽も。
 今はおかしな昔話。

 春の陽気は心地よくて、思わず布団に包まりたくなる。
 二度寝はダメだと教わったけれど、折角の春なのだから少しくらいいいでしょう。

 と。
 何故そう考えたのか。
 しばらくして、わたしは自分に問い詰めたくなった。

 ――ドン!

 ――バタン!

 ――ゴロゴロゴロ…

 ――ガチャン!!

「…痛い。」
「おはよう。よく眠れた?」
 うっすらと蒼い羽根を二つ持った、線の細い笑みを浮かべるお母さん。
 ジョウロを持っていたということは花壇に水をあげていたのか。
「寝すぎた…起こしてよ」
「起こしたわよ?」
「何回?」
「ドア越しに一回」
「わたしが朝弱いの知っているくせに」
「ほら、天気がよかったから」
 理由になっていない。
「ちょっと一時間くらいお散歩に行く前に」
 何時に起こしたのっ?

 わたしの朝は、いつもこうして始まった。