「何泣きそうになってんだよ」

「だって、怖くて仕方なかった。このまま目を覚まさなかったら、どうしようかと…」

俯きながら言うあたしの頭を、遼が優しく撫でてくれる。

不安定だったあたしの心も、徐々に落ち着きを取り戻す。


「俺さ、トラックと衝突したんだ、あの日。バスで学校へ行く途中だった」

初めて聞く事故の話。

…学校…?

バレンタイン前日は、確か日曜日だったはず。

何で、登校してるの?

不思議に思ったけど、何も言わずに遼の話を聞いた。

「次の日、バレンタインだったじゃんか。俺、今年はお前のしか貰うつもりはなかったから、ソワソワしてて。
貰えなかったら貰えなかったでかなしーだろ?」

恥ずかしいのか、窓の外を見ながら話す遼。