花と死(前編)

「汚いわ。」
笑んで答えるヴォルフラムをタナトスは馬鹿にする。
「頼んだ割に、貴様が直々に来たのか。」
「ふふふっ。いいじゃない。」
タナトスはそう言いながらヴォルフラムを見る。
「どうした。殺さないのか?」
「随分とたのしそうね。」
「さぁな。」
狂ったように笑いながら、ヴォルフラムは言う。
「これが罪だと言うのなら、罰だというなら、全て受け入れよう。例え、愛おしいものを亡くすとしても。」
「あら、諦めたの?」
「あぁ。逆らうなど、守るなど、無意味だと思い知った。」
そう呟くと、力無く笑う。
おおよそ、自分が正気でないことは自覚していた。
「そうだ。愛、など……」
(あいされたい。)
「信じない。」
(あいしている。)
「俺には何もない。」
(さみしい。)
「最初から、これからも、同じだ。」
(かわりたい。)
「もう、嘆くのは疲れた。」
(あきらめるな。)
「だから、諦める。」
(いやだ、ひとりにしてほしくない。)
相対する想いが諦めを阻害しようとした。
それを聞かないように耳を塞いで崩れ落ちた。
「……あら、言う割には諦めきれないみたいね。」
「フラン!」
ニィッと嗤うタナトスを睨んで、クラウジアはヴォルフラムを抱き締めた。
「ふ、はは、は……」
無理に笑おうとヴォルフラムは口角を歪に持ち上げた。
かたかたと震えるのが伝わった。
「……タナトス。」
名前を呟くとクラウジアはタナトスを見た。
「罪って、何だ?」
「あんたにはわからない。」
タナトスは馬鹿にする。
「でも、教えてあげる。」
「必要はない。」
ヴォルフラムは言葉を遮って言い放つ。
その言葉は、はっきりとした拒絶に聞こえた。
「フラン!」
縋るようにクラウジアはヴォルフラムを見る。
「お願いだ。教えてくれ。」
「教えない、とは言っていない。俺の口から話す。」
必死の形相を見遣りもせずに言った。
「俺の罪はその女を裏切ったことだ。」
「自覚はあるようね。」
タナトスはケタケタと嗤う。
「タナトス!」
シエリアが呼ぶと、タナトスは目を見開いた。
その姿が、よく知った存在にどことなく似ていた。
「……で、あってるかな?」
顔を強ばらせたままで相手の名前を確認する様子は間抜けだ。
「あははは!まぬけ……」
タナトスはわらった。
「そうよ。私はタナトス。」
「あってた。良かった。」
シエリアははにかんだ。