朝早くに目を覚ました奏(かなで)は、日の光がさんさんと降り注ぐ窓辺で、ぐっとひとつのびをした。
「今日から私も高校生かぁ…」
　実感ないなぁ、と言いながら、奏は窓の外、見慣れた街並みを眺めていた。
「奏ー？起きてるなら降りてきなさいよー」
「はーい！今行くー！」
　母に返事を返し、奏は一階のリビングへ向かった。
　リビングの扉を開け、中に入れば、美味しそうな匂いと、父と母。いつもとなんら変わりない朝。
「奏、今日も結翔(ゆいと)くんと行くんでしょ？なら早めに準備済ませなさいよ」
「分かってるよー。ユイいつも早いんだもんなー」
　いつも早めに迎えにくる幼なじみの結翔に対しぶつくさと言っている間に食べ終わったらしい奏は、着替えるために部屋に戻っていった。
　部屋に戻ると、早速壁にかけてあった制服を手に取った。
「なんかやっぱブレザーって高校生な感じだなぁ。中学はセーラーだったからかな？」
　なんて至極どうでもいいことを呟きながら、奏は制服に着替えていった。
「これでよし、と。うん！OK！」
　肩の下辺りまで伸びている髪をハーフアップにし、軽くだけメイクをして、奏は部屋を出る。
「行ってくるね！」
　リビングにひょこりと顔を出し、それだけ言うと、奏は玄関で真新しいローファーを履いて、外に出た。

　外にはすでに、結翔が立っていた。
「ユイおはよ！今日も早いね、待った？」
「いや、別に。さっき出てきたとこだし」
　眠そうにひとつ、欠伸をした。結翔が言っていることは本当のようだ。
　いつものように、二人並んで歩き出す。他愛ない話で笑いながら、これから通う高校へと、足を進めた。

「あ、あそこだ！やっと見えたねー」
「おー」
　気のない返事を返す結翔の腕を引き、奏は楽しそうに笑う。その奏の笑顔を見て笑う結翔も、なんだかんだいって楽しそうだ。
「楽しみだね、ユイ！」
「あぁ」
　二人して笑い、高校の門を抜けた。