冷たい口調で言った彼の手のひらにはリップがのっていた。
あ! 私のリップ!
拾ってくれたんだ…。
「ありがとう」
彼からリップをもらう。
意外と優しいとこあるじゃん。
"意外"は失礼か。
「お前、名前なんて言うの?」
彼は会話を続けた。
「咲野茉心」
彼の冷たい口調に対して私も冷たい口調で返した。
なんか、微妙な雰囲気…。
「茉心か。 俺は椎田紫苑。シイでも紫苑でも好きに呼んで」
椎田紫苑…まだ仲良くないし、紫苑くんでいっか。
「分かった、紫苑くん。 よろしくね」
席も隣だし仲良くしなきゃな。
「"くん"いらん。 紫苑でいい」
…なんで!
"くん"くらいいいやん!
何気わがままなのかな。
めんどくさい。
「分かった」
めんどくさいとか言いながら言ってしまった…。
「じゃ、8組。 行くぞー」
