吉澤くんに気持ちが届いたのだろうか。


彼は我を取り戻したのか、手首を放してすぐに距離をとった。


訪れる気まずい雰囲気。



「…悪い」



吉澤くんからの謝罪に、何を言えばいいのかわからない。


ただ黙るしかなかった。



私たちはどちらからともなく歩き出した。


映画館に向かう。


早く映画が観たい。


ただその一心で、自然と足は速くなっていた。


映画が始まれば、喋る必要性もないんだ。


そして観終われば、雰囲気も少しはマシなものになる。


そんな気がして。