ドライアイス

「いくらだった?」


そう聞くと、アイスを少し舐めてから口を開いた。



「いい。今日は全部俺持ちで」


「全部?」



全部ということは、映画代もだろうか。


それはさすがに悪い。



「今日は元々俺が誘ったんだ。それくらい当たり前だろ?」


「いやでも、元々は私がこの映画観たいって言ったから」


「あーもう、何言っても無駄だから。悪いと思うなら、次は水瀬が奢って。それでどう?」



どうしても譲る気はないようだ。


なら、その言葉に甘えるしかない。



それにしても彼はずるい。


こういう言い方をすれば私が折れると、ちゃんとわかっているみたいだ。


負けているみたいで、なんだか嫌。