━━白崎!白崎!ファーイト!ファイトー!!
 聞き慣れた生徒達の声。
 全校生徒の半数が今日、このグラウンドのスタンドに応援に来てくれた。
 残り半数は、橋本のいる陸上競技場に応援に行っている。
 準決勝の試合が終わった後に陸上部の結果を聞いたが、その時はまだ橋本は走る前だったらしい。
 聞いたのは笹乃の3位入賞という結果だけ。
 笹乃の入賞は喜ばしいことだけど、俺的には橋本の結果が早く知りたい。
「……橋本ちゃん、どうやったかな?」
「なんや、冬吾か。知らん。別に興味なかし。」
「嘘つけ。バレバレやし。」
 ……あ~。うっせ。
 冬吾はいいやつだけど、自分は笹乃が好きなの差し置いてこういうこと言うのはイラッとする。
 …いつもので黙らすか。
「…あ。笹乃に言い忘れとった。」
「ん?なんかあったと?」
「うん。冬吾が笹乃のこと、ばり(とても)応援し」
「さ。そろそろ行こうで。」
 ━━よし。勝った。
 …なんて会話をしていたのは随分前のこと。
 今、俺達は試合の真っ最中だ。
 7回裏。2-0で、俺達は負けている。
 このままじゃ、コールド負けという大ピンチだ。
 ノーアウト満塁。打席は俺に回ってきた。
 …このままだと負ける。ここで、俺が打たないと……。
 ━━ポン。
 何だ?不意に肩に手を置かれた。振り返ってみると、そこには冬吾がいた。
「なんや?」
「…こがんこと言うキャラじゃなかけどさ。」
「別に気にせんし。なんや?」
「……橋本ちゃんは、お前は絶対打つって信じとった。それは、俺も信じとる。お前が、橋本ちゃんは絶対勝つって信じとるごとな。」
 …は?なんやって、それ。やめろよ。こんな時にそんなこと言われたらさ……
「…泣くなさ。泣くとは今じゃなかやろ。」
「…うっせ。泣いてなかし。」