「やったー!!!♩」

……うるさい。

私、雪森 伊緒凛(ユキモリ イオリ)。

花蓮女子学院に通う高校1年生。

そして私の目の前で嬉しそうに飛び跳ねているのが、幼馴染のお兄ちゃん的な存在である大川 理玖(オオカワ リク)。

ちなみにさっきの『やったー!!!♩』ってのも理玖の声。

そして、なんで理玖が飛び跳ねて喜んでいるのかというと……

「すごろくで勝っただけでしょう?何がそんなに嬉しいのよ。やっぱり子供みたいだなぁ、理玖は。」

そう、ただすごろくをしてただけなの。

私と理玖の家は隣同士。

こうして時々日曜日に、お互いの家に行って遊んでるの。

「だって伊緒凛に勝てたんだぞ!?もう一生ないかもしんねぇ!!」

「そんなことないよ。」

「いやいや、あるって!」

1人で興奮してる理玖。

めんどくさいなぁ、ほんとに。

「だからさ、伊緒凛!俺が勝つことなんてめったにないんだから一つだけ言うこときいてよ!」

「はぁ!?そんな約束なかったじゃない!!」

思わず声を荒げてしまった私。

何を言いだすのよ、急に。

やっぱり理玖ってバカなの!?

断り続けても必死に頼み込んでくる理玖。

もう!

なんなの!?

「頼むって!事情があんだよ!」

事情……??

理玖がこんなに頼むなんてよっぽどのことなの?

そう思うと聞かずにいられない私は、気付いた時には

「……聞くだけだよ?」

と言ってしまっていた。