「抱きしめんのとか、可愛いって言われるのが困るかもしれないけど、じゃあ永瀬自身のことは?…好き?嫌い?」

「…嫌いじゃない…と思う」

「うん」

「永瀬いつも強引だから…私の気持ちなんて無視だったから…好きとか言われても、どうしていいか分からない…」

「うん…そっか」

永瀬のせいで今の状況がある。学校中から笑われ、クラスでハブられ、正直学校に来るのがつらかった。

永瀬の好意も、初めは何かの罰ゲームの相手にされているのかと思った。私のことを考えない一方的な強引さにうんざりしていた。

でも私に対する想いは本物なんだと分かってきた。

嬉しかった。

そう、嬉しかったのだ。
ただその気持ちに応えるのが怖かった。永瀬と私では合わない。周りの目が気になった。

それでも永瀬はそんなこと知るかとばかりに周囲のことなんて気にしないから。私は逃げることばかり考えていたのに。

「私は二人が付き合ったら嬉しいけどな」

はっと橘の顔を見る。私が何を考えていたのかお見通しなのか、真っ直ぐに私の目を見て「自信持っていいんだよ」と言った。

目頭が熱くなる。教室で泣いたら今以上にみんなに引かれる。必死で涙を堪えた。

思えば橘は最初から何も変わらず私に接してくれた。シカトなんてしない。陰口も言わない。

橘には橘の友達がいる。私とは以前から一緒に行動するような関係ではなかったけど、いつもさり気なく話しかけていてくれた。

「ありがとう…」

「どういたしまして」

橘はすごく優しい顔をしていた。

「…永瀬の方こそ、もう私のことなんて嫌いになったかも…。酷いことたくさん言った…」

「さあ…あいつバカなくらい前向きだし」

「はは…それ言えてる」

私は必要以上に笑った。
モヤモヤした気持ちを忘れてしまいたいと思いながら。