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あれから数日たった。
永瀬と気まずい会話をした次の日から、あいつは私に一切触れなくなった。
朝来たときには普通に挨拶をする。だけど抱きしめたり、『可愛い』と言うことは一切なくなった。

違和感だ。
毎日うざったくくっついてくることがなくなって、清々しいはずなのに。この違和感は何だろう…?



休み時間はクラスメートと楽しそうにしゃべっている永瀬を意識しながら、スマートフォンをいじって一人で時間を潰す。
この数日で友人と呼べる子は離れていった。
永瀬に絡まれる私を見ていたクラスメートは最初は苦笑いだった。
それが永瀬に距離を置かれている状況を見ると嘲笑に変わった。
目が『ざまぁみろ』と言っている気がした。
昨日の席替えで完全に背を向けられ寂しい休み時間がある。

唐突に橘が近づいてきた。

「最近どうしちゃったの永瀬」

「何が?」

「西川へのスキンシップが減ったよなーって。見てて楽しかったのに」

「殴るよ橘」

「永瀬に何か言ったの?」

「うざいって言ってやったの」

「やっぱ恋人になれません的な?」

「まーそんなとこ。てかその言い方は元々いい雰囲気だったように聞こえるんですけど」

「あれ?西川って永瀬のことを全く何とも意識してなかったの?」

きょとんとした顔で言ってのける橘に、私は思いっきり顔を歪めた。

「当たり前でしょ」

「ふーん。ついに名物カップル破局か」

「カップルじゃないって」

「永瀬はどう思ったかな」

「…………」

「めっちゃ西川ラブ!だったのに、そんなこと言われて」

「毎日毎日しつこかったし、静かになってむしろ清々してるよ」

「あはは、ひどいなそれ」

橘が面白がってるのがバレバレだ。

「永瀬に何て言ったの?」

「別に…。抱きしめるのとか、可愛いって言うのがうざいって」

「ふーん」

橘がニヤニヤ笑う。

「私は応援してるんだけどな」

「は?」

「永瀬が一方的な感じだけど、実は西川も永瀬の態度に満更でもないかな?とか」

「………」

私が永瀬を…?満更でもないって…?

「西川はさ、永瀬のこと本当はどう思ってんの?」

「え…私、は…」

「永瀬から西川と距離置いたよね。それどう思った?寂しかったりするんじゃないの?」

「………」


寂しい?

この違和感は寂しさ?