「素直に認めちゃいなよ西川。永瀬に好かれて悪い気はしてないんでしょ?」

「うわっ!それ本当か千里!マジ好き!」

また抱きしめようとしてくる永瀬を避けてトイレに行くと言って逃げる。
こんなのが毎日同じことの繰り返し。疲れるばかりだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



ホームルームが終った瞬間に教室を出た。永瀬に捕まる前に早く学校を出ようと早足で玄関まで歩く。この行動はいつも通り。

「待ってよ千里!」

そして永瀬に追いつかれる。これもいつもの通り。

「一緒に帰ろう」

「毎回毎回しつこいよ。永瀬の家逆でしょ?」

「俺が千里を送っていきてーの」

ああ この笑顔がむかつく。
ニコニコと無邪気に笑う顔が不愉快だ。笑顔の奥で考えていることが分からない。

永瀬は何で私に付きまとうのだろう。かっこよくて背も高く、前向きで明るい性格のせいか女の子にめちゃくちゃモテる。他の高校でも永瀬は有名だった。

私は永瀬に釣り合うようなルックスではない。容姿に特別秀でたところはないし、永瀬の横では霞みそうなほど地味だ。

それなのに可愛いってなにさ?私のことなんて相手にしなくていいのに…

心底嫌だった。
注目を浴びるのは好きではない。
永瀬に好かれること、可愛いと連呼されること、抱きつかれること。全部が嫌で仕方なかった。
何度も嫌だとはっきり伝えたが、永瀬はやめようとはしなかった。

気づかないのかな?学校中から冷めた視線を向けられて、聞こえるように陰口言われていることを。主に私に、だけど。

「……でさ、俺の前にいたやつが面白くてさ…」

永瀬の言ってることが全然耳に入らない。横で楽しそうに私に話しかけるのに、私はぼーっと聞き流していた。

私の頭の中はもう永瀬のことでいっぱいなのに。毎日毎日、ほんとうざったいな…