ドアが閉まって、階段を駆け下りる足音を聞いたあと、私は怒鳴り出す。





『は!?ふざけんな!なによ、なにが、なにが、ダイキライよ!私だって………わたしだって…』









………あーあ。

私の負けだよ。





グチャグチャになる表情に、暖かくてしょっぱい涙が、ポロポロと終わることなく溢れる。



『私は…………………ダイスキよぉ…………………………っ』










うわあああああああああ、と。


ベッドのシーツによだれが垂れるくらい泣いた。




ベッドのシーツも、私の顔もぐっちゃぐちゃで。

これはもちろん、だいすきな圭斗の前では晒せない。









ダイキライなんて、別れようって言われたのとほぼ同然。


私…………一緒に居たかっただけなの…







例えばこれから紗羽さんからの試練があったとしても、

今は私を優先して欲しかった。

私の涙を無視しないで?

私だって、たまに紗羽さんみたいに自由にアナタを

操ってみたいよ………

すき。すき。だいすき。


なんで………






普通じゃないってわかってても、ツライよ……













『………ひっく…っ、んっ………帰らなきゃ…』


泣きすぎて過呼吸になるのを抑えて、私は携帯を開く。




着信履歴から、タクシーの番号を探す。








プルルルルルルルルルルル。




ワンコール。出ない。





プルルルルルルルルルルル。


ツーコール。出ない。





プルルルルルルルルルルル。



「はい、もしもし?」



『和真さぁ~~~~んんん』








声を聞いた瞬間、引いたと思われた涙が更に出てきた。




その声を聞いて、和真さんはオーバーリアクション。



「ど、どした!?」

『圭斗の家にいるんで………来てくださっ…い』





ヒクヒクになる声で、なんとか言った。










「……………分かった。すぐ行くから」


何かを決めたような声で、電話の相手は答えた。





私は安心して、通話終了ボタンを押す。










こらえた涙をぎゅっと拭って、私はマスクをかけた。



シーツもカーテンも窓もそのままにして、私は圭斗の家を後にした。