カーテンを閉めたあと、圭斗は、ベッドの辺りに散らかっていた自分の服を着直す。






私はキョトン、と。

状況が分からないでいる。












目の前でそそくさと着替える彼。



………もう、行っちゃうの?





『え……圭斗…?』


「ごめん、俺もう行かなきゃ」



私の方も見ずに、圭斗は答えた。









私は必死に引き止める。



『なんで!まだ…まだ、そんなに、一緒にいないじゃん!行かないでよ…』


「…」


『は!?無視!?どうして!どうしていっつも紗羽さん紗羽さんって、私の事は後回し?!これじゃ、これじゃまるで…』




言葉に切羽詰まったが、最後までいい遂げた。

『浮気みたいじゃない!』






「…」

圭斗は、ズボンを履いたまま何も言わない。








その状況に、私は腹が立つ。

とまらない。



なんなの。



『なんか言いなさいよ!黙ってないで!圭斗なんか大…』

「うっせえよ!」




何も言わなかった圭斗が、急に口を開いた。

それは2キロさきまで聞こえそうな大声だった。






「全部全部お前の言うことなんて聞けねえんだよ!状況を察しろよ!」

手を止めて、こちらを向いて確実に。


私に向かって、怒鳴っている。






『は!?逆ギレ!?』

「だから、この状況を考えろ!」

『状況もどうも……優先順位って、圭斗にとってはそんなもんなんだね!私より、紗羽さんなんだね!』


私はむきになって口調を強めた。

目から垂れそうな生温かい水が、今にも溢れそう。





圭斗は、その私の表情を見ても、ひとつの動揺もせず言い放った。


「あぁ!そうだよ!お前なんかより、紗羽さんだよ!お前なんか……」







そのあとの言葉は、紗羽さんからのコールで掻き消された。



電話を出ずに、圭斗はドアに向かって言った。





「俺もう行くから。」



『え…っ』







「お前なんか………大ッキライだ!!!」






















パタン、と閉まるドアの音だけが、無音の部屋に響き渡った。