『ただいま~』






とある街のアパート六階。

鍵を開けて家の中に入る。


ただいまなんて洒落て言ってみたけど、もちろん中からの返事はない。




…ひとり暮らしなんだから。










ふと、玄関の横にあるちいさな赤い箱に目をやる。

そこには、懐かしい字で書かれた私の名前。





【  佐竹 優那  】


そして、名前の下に私の家の住所が書かれた封筒が入っていた。





…お母さんだ。





一人暮らしを始めてもうすぐ3年が経つ。

高校で先輩と殴り合いの喧嘩をしたことから、退学になってしまった私。

あの頃はヤンチャしてたなぁ。


最終学歴は中卒。
もうダメだって思ったとき。



…雑誌で求人募集をしている今の会社を見つけたんだよね。


お母さんにはすごい反対されたけど、今の道は間違ってないと思う。





仕事があるってありがたいって、仕事をしていくうちに思えるようになった。









まだその封筒の封は開けずに、お風呂に向かった。


今日は、期間限定発売で購入したイチゴの入浴剤を入れることにした。







入浴剤が、お湯の上で音を立てて溶けていった。