『はぁー…』
午前10時。
今日は会社を休んで、家のベットに横たわっていた。
圭斗に移した風邪が、また移されてぶり返すなんて。
私も昔から、体力が弱いもんだ。
脇から体温計を抜くと、38度5分。
まぁまぁ、ダルいな…
あれから圭斗は、明日も仕事だから、とそのままタクシーで帰っていった。
危なっかしいよろついた足で。
大丈夫かな?ちゃんと着けたかな?
きっとタクシードライバーは、和真さんだろうから、大丈夫だと思うけど…
今は圭斗の体調が心配。
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俺は、くらくらする頭で、3社の雑誌のスナップ撮影をしていた。
急いでいるのか、移動する車のスピードと揺れは、尋常じゃない。
だんだんとハカハカしてくる息を、なんとか殺す。
俺、今日ちゃんと出来るかな…。
なーんて。
俺、それより気がかりな事があるんだよね。
それは……
今日の撮影で、紗羽さんが一緒なこと。
俺、今まで紗羽さんとの関係、嫌いじゃなかったんだけど。
優那と出会って、『恋心』ってのを知って。
それから、紗羽さんとの関係が、なんだろ…気持ち悪くなってきた。
やめたい。この関係を切りたい。
優那だけにしたいのに。
もしも、この事を紗羽さんに言ったら、芸能界落とされるかもしれない。
変なスキャンダル起こされるかもしれない。
それに一番心配なのは………優那。
優那が狙われるかもしれない。
…………俺のせいで。
優那にとって俺は、紗羽さんから逃れる命綱。
俺がヘマしちゃいけない。
しばらくして、揺れる車が止まった。
そして、ドアを開ける俺のマネージャー。
「圭斗さん、着きましたんで準備おねがいします」
「おう…」
憂鬱な心を他所に、俺は着替え室に向かった。