『おっはよーございまーす!』





張り切ってドアを開ける。


独特の、機械の臭いがする部屋。




スキップをしながら、私のディスクを目指す。

そう、ここは会社。








あとあと、サングラスとマスクをして私は圭斗の家を出た。

呼んだタクシーは、もちろんあの、和真さん。



タクシーで話した、何気ない会話。







「圭斗から色々聞いたんすか?」

『ええ、それはもちろん♪』

「…妙にテンション高くないすか?」

『えぇー?そうかな?普通だよぉー?』

「いや、絶対おかしいでしょ。もしかしてヤッたとか!?」

『ないない!そんな、……ないないっ!』

「………やっぱりなんかおかしい…」

『♪』

「いっておきますけど、圭斗が本気で人を好きになるなんて奇跡のまた奇跡ですからね」

『♪』

「………って、聞いてないし」








なーんか昨日は和真さんに色々迷惑かけちゃったかな。
あんなハイテンション、ちょっと異常だよね。

今度お菓子持って、謝りに行こうか……うん。









「おーはよー、桜田圭斗の情報採れたか?」

朝っぱらから、おっさん臭が漂う。


振り向くと、部長だった。



私はニッコリスマイルで返事をした。

『えーっと!桜田圭斗は白でした!安達紗羽との情報はありません!関係も!』

「…ほんとか?」

『ええ!この目で見ましたとも!はは!』

「…お前の追跡に不具合があったのでは?」

『開始五分もせずにターゲットが現れたのは驚きましたが、全くの白でしたよ。嘘だと思うなら他の人にもやらせて下さい』

「そ…そうか、わかった」




わたしの喜怒哀楽っぷりに寒気がしたのか、部長はそのまま引き足でディスクへ戻った。
















ーーーーーーーーーチャラリン♪


携帯の着信音が鳴る。




メールだ。誰からだ……

『!』






【 差出人 圭斗
  件名  おはよう。】








圭斗からだ~!!!!♡

『!!!」




声を殺して喜んだ。



あまりにも嬉しかったので、ダッシュでトイレへGO。

なんでトイレを選んだのかは謎。


ただ周りを気にせず騒げるところに行きたかっただけ。







急いでトイレに行き、ダッシュで個室へ入る。


圭斗からのメールを、タップして開いた。






「おはよう。

優那、起きてる?

俺は今起きた~b(^o^)d

もっかい寝たいくらい眠い。

今から仕事だ。

今日は撮影3本。夜まで。

嫌だよ~」







so cute。
ベリーベリーキュート。




本当に桜田圭斗って、人見知りなんだ。
テレビとか雑誌の写真であんなに笑顔なのは、きっとカメラマンとかスタッフさんの事信頼できるからなんだろうな。









私は超高速で返信する。



『おはよう(о´∀`о)

私はもう出勤してるよ!

私にとったらこの時間の起床は

お寝坊対象。

お仕事頑張ってね!』








ポチっと、送信ボタンを押す。

こんなボタンひとつで本当に送信できてるか不安になった私は、何回も送信ボックスを確認した。






トイレの便器の上で携帯いじりながらにやける女。

怖くてあまりにも放送禁止ですね。








けど、幸せなのです。







そんなうちに、また着信音が鳴る。

急いで、メールを確認。



相手はお望み、圭斗。








「お~!出勤お疲れさん。

本当仕事マンだな。

俺も準備するよ。

会いたい。優那に会いたい。

今日の10時に、俺ん家居ろよ。

鍵、ポストに入れておくから」






…。


う、う、うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!





嬉しい!会えるんだ!!!ワァァァァァァァイ!


嬉しさのあまり、急ぎすぎの返信。





もう嬉しい。やばい。うれしい。

この気持ちを言葉にするのはあまりにも難しくて、国語の成績1の私が精一杯文字にした言葉。















『ンヴピィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイアアアアアアアアアアイアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!』


あー。すっきり。ふう。
文字にするにはこれが精一杯。

そして肺活量をふんだんに使った大声。






「…あの……大丈夫ですか?」

隣の個室から、控えめな女の声が聞こえた。





…やっば。人居たのかよ。

………やっちゃった。








『すっ、すいませんっ!』


こっ恥ずかしくなった私は、そのまま乱暴にトイレを出た。