「ついたよ~」

ふりむいて、和真さんが言った。





タクシーが止まる。







目の前には、大っきい一軒家。

すごい広い。デカイ。綺麗。








「んじゃ、ありがとな、和真」

「おう!んじゃ俺もう行くねー」



桜田圭斗と和真さんは、タクシーの窓越しに話していた。






走りだしたタクシーに向かって、ペコッとお辞儀をする。











あのあとタクシーで、色々なことを聞いた。


   



桜田圭斗と高木和真(たかぎ かずま)は、中学の頃からのお友達。マブダチ。

いわゆる…親友らしい。




私と同様、二人も最終学歴は中卒…。

結構話は合った。




和真さんは、結構な派手髪で、髪は金色。

それに反比例するかの如く、ピアスの数は少なかった。






そして桜田圭斗は、その逆。

髪は落ち着いたベーシックブラウン。
それに反比例するようなピアスの数。

全部耳だけどね。








まぁ、そこから気が合って話すようになって、和真さんを、「さん」づけできるくらいまでに仲良くなったわけ。




…でもなんであんな派手髪チャラ男が、タクシードライバーなんて出来るんだろう…





そんなもんなのかな?

















「何ボーッとしてんだ、マスク上げろ」

少し考えこんでいる間に、私の頭上から桜田圭斗が話す。




身長149cmの私に対して、桜田圭斗は182cm。

モデルだからといっても、でかい。





…私がちっちゃいのかな?







だから、桜田圭斗と話す際は、首が痛くなるくらい上を向かなければいけない。







桜田圭斗の言うとおり、私は、顎にしていたマスクを鼻先まであげた。

ファンデ崩れそうです…。










桜田圭斗が、家の鍵を開ける。

それを後ろで見ている私。

























ーーーーーーーーーーーーーガチャ。



桜田圭斗の家の鍵が開いた。







「入れ」

桜田圭斗が言う。





返事はせずに、そのままついていった。







玄関に充満する芳香剤の匂い。



…私の大好きな石鹸の香りだぁ。
















桜田圭斗の家のドアが、私達を飲み込んで、音を立てて閉まった。