桜田圭斗。




あの、雑誌やテレビでしか見たことのない顔が、私の目の前にいる。


サングラス越しでも分かる。








桜田圭斗だ。













『…あ……あのっ』


私が話しかけると、桜田圭斗はサングラスをかけ直して話し始めた。




「マスコミの人だよね?」

サングラスをしているので、目つきはよくわからない。
…が、口角は上がっていない。

   





私は慌てて返事をする。
 
『はい…そうですけど……』


「んー…詳しく話したいところなんだけどさぁ、こういう所で話すと他の人が聞いてたりするから」




桜田圭斗は、頭をポリポリ掻きながらドヨドヨと話した。










…そうだ。録音しよう。


この状況でその桜田圭斗の゛話したいこと゛やら何やらを聞けば話してもらえるかもしれない。


それを録音機器で取っておけば…






会社にとって利益にはなるだろう。








私は、ポケットの中にある小さな録音機器を手に取る。


桜田圭斗にバレないように、ポケットの中で器用に録音スタートボタンを探した。






平べったい機器の中心にある、丸みを帯びた凹凸。

あった。スタートボタンだ。











『あの、その、言いたいことやらを…話してくれませんか?知りたいです』


そう言って、ボタンをおそうとしたとき。
















耳元で、桜田圭斗が囁いた。



「ナイショにしてくれなかったら、俺の女にしちゃうよ?」