Closed~閉じてる彼ら~

部屋を出る。


あ。あの人の名前、聞き忘れた。

まぁ、いいや。





子供達の声は、もう聞こえなかった。





天城くんは、ちょうど帰るところだったのか、入り口に向かっていた。


「天城くーん」


しかめっ面が振り返った。


「何?」

「今、帰り?」

「そうだけど」

「一緒に帰ろ」


彼は胡散臭げにあたしを見た。


「なんで?」

朝の会話を思い出す。


「興味が有るのかも?」


少しだけ、ね。


「…俺に?」

「多分ね。可能性の一つだよ、ワトソン君」

「寒い」

「ツッコミに愛が無いね」


彼は、何も言わなかった。