「お待たせっ。何か騒がしいね」

「あ、…うん」

「秋人、私ね今日麗さんと約束あるんだ」

「そうなんだ」

「ごめん、言い出すタイミングなくって」

「いや、いいよ。姉貴と遊んでやって。俺、帰るわ」


秋人はハハっと乾いた笑みを零しながら、髪の毛を掻き上げる。
そんな秋人に、私はつい尋ねてしまった。


「……話さなくていいの?」

「何を?」


その表情から笑みが消えて、ニコリともせずにたった一言だけ返す。

そうだよね。
余計な、お世話だ。



「そっか、家でも話せるしね。ごめんごめん。
じゃあ、私先に行くね」

「……」

「また明日ねっ、バイバイ」


明るく手を振る私に、秋人は力なく微笑むと手を上げた。


折角、普通に話せる様になったのに、私は何を言ってるんだろう。
麗さんは秋人の地雷なのに。


やっぱり、秋人が激しく動揺したりするのは麗さんなんだって思った。