走って走って、ただ目的地にがむしゃらに走った。


秋人の家に到着した私は、膝頭に手をつけ肩で大きく息を吸う。
ぜえぜえとなる呼吸を整えようと、くいっと顔を上げた。


袖を捲り上げて、額の汗を一気に拭うと私は秋人の家のインターホンを押した。



心臓がバクバクとする。
麗さんがいます様に。
麗さんがいます様に。


『ハイ、どちら様ですか』


インターホンから、麗さんの声がして私は安堵の溜め息を吐いた。
ぎゅっと拳を作ると、私は胸元へと持っていく。



「麗さん、愛です」

『愛?秋人ならいねえよ?』

「いや、麗さんに話があって」

『……私に?』

「はい」


少しだけ黙る麗さん。


『何かよくわかんねえけど、入っておいで。
そこから裏に回ったら鍵のかかってない入口あるから』

「はい」


言われた通り、秋人の家の塀伝いに裏へと回ると大人がどうにか通れるぐらいの小さな鉄の扉があった。