姫乃の可愛らしい声が私の名前を呼ぶ。 「なんで、そんな格好なの?」 自分を指さして姫乃が首を傾げた。 彼女が言っているのは、えらく長いスカートに、この極太フレームの厚底メガネのことを言っているのだろう。 ちなみに中学校のころ、私はこんなもの一切身に付けていない。 スカートだって、教師に毎度毎度注意されるくらい短かったし、髪だって普通に下ろしてた。 「……ちょっとね」 曖昧に言葉を濁す。 「『月影』の娘であることを隠すため」…… 姫乃にまだ、その事実は言えない……。