品の良いおかみさんが恭しく手をついて用意してくれたお料理は、細やかな竹細工の上に、芸術的なまでに繊細な料理ばかりだった。

トオル君は美しい箸さばきでそれらをひとつひとつ口に運ぶ。

こんな時、彼の育ちの良さをしみじみと感じる。

『あいつは、住む世界がケタ違いに違い過ぎる』

カズトが以前言ったトオル君の世界の一端を、ほんのちょっとした彼の仕草から感じ取る。