「突然じゃないよ。今までずっと、その事を考えていたんだ……」

新幹線の中で、ずっと外を見ていたトオル君の姿を思い出す。

「片岡は、憎い。あいつの子供だ、と思うと正直、胸が張り裂けそうになる……。
だけど……」

トオル君は私の手を取ると、手の甲にキスをする。

「だけど、君を失いたくないと言う気持ちの方が大きいんだ」

私は、トオル君が言っていた「別れない」と言う言葉の裏にある彼の決意を知り、動揺する。