財布とパスポートだけを持つと、僕は病室を飛び出した。

厚手のコートを引っ掛けたが、まだ、肺炎が治り切っていないためか、喉が鳴り、悪寒や胸痛に苛まれる。

でも、そんなことに構っていられないくらい、僕はハルナに会いたくてしかたなかった……。

一台のタクシーがタイミング良く病院の玄関に滑り込んで来たため、僕は手を上げ、乗り込もうとする。

だけど、そのタクシーに乗っている二人連れが降りてきたのを見た瞬間、思わず後ずさる。