走ってきたのか、その額には少し汗がにじんでいて、息も若干上がっている。
お兄さんから私を引き離すと、間にわたしをかばうようにして立ってくれる。
「な、なんだよやっぱ彼氏いるのかよ……」
立花くんに睨まれて、太々しくそう言ったかと思えば。
チッと悪態をついて何処かへ消えていった。
「……」
「……」
その姿が見えなくなったところで、ホッと胸を撫で下ろすと、ふとこちらを見下ろした立花くんと目が合う。
……あっ! きっと"何泣いてんだ、バーカ"ってからかわれる!
そう思い、涙を拭おうとした手をパシッと取られた。
「……え?」
「こすんなよ。赤くなるぞ」
「立花く……」
ポンポン、と、とても優しく頭を撫でられて。
「ごめんな、遅くなって。怖かったろ? 泣きたいなら、我慢すんな」
そう言った立花くんの瞳がなんだかすごく優しくて。
……怖かった。すごい、怖かったよ。
でも、涙が溢れ出たのは、そうだからじゃない。
嬉しかったから。
優しくされたのがね。嬉しかったの。

