「……行くか。数学準備室」
「うん……」
このまま逃げても、翌朝が恐ろしいことは分かっているので。
わたしたちはトボトボと数学準備室に向かって歩き出す。
……数学準備室かあ。
わたしたちが綺麗にしてから行くのは初めてだよね。
ゴリちゃん先生、ちゃんと綺麗なまま使ってくれてるのかなぁ。
なんて考えているとき。
わたしたちと反対側から歩いてくる人物がひとり、目に入る。
だんだんと近づいてくるその人の輪郭が、徐々にハッキリしてくる。
その人は、わたしもよく知っている人だった。
それは───
「玲! なにやってんの?」
立花くんの姿を捉えた瞬間、ぱあっと明るく咲く笑顔。
今は一つにまとめられたくるんとカールされた茶髪に、すらっとした手足。
パッチリと大きな瞳にわたしの姿なんて、きっと入っていない。
……あの、子だ。きっと、立花くんを好きな、女の子。

