"成田ちゃん"なんて、聞きなれない呼ばれ方に戸惑って顔を上げると。
目の前いる、たった今ぶつかった人物は……伊武くんだった。
伊武くんとも、元々まったく話したこともないような仲だったけど、
修学旅行を機にちょこちょこ話すようにはなった。
というよりも、一方的に声をかけてもらってる感じだけどね……。
伊武くん、底なしに明るいし。
「よっす……って、どうした!?」
「え?」
「泣いてね?」
え、うそ……わたし、泣いちゃってる?
めずらしく戸惑ったような伊武くんの表情を見てわたしは急いで涙を拭う。
は、恥ずかしいところ見られちゃったな……。
「ご、ごめ…なんでもないの。ただ、ちょっとゴミが目に、」
「ゴミって……。…あ、そーゆー事」
わたしの咄嗟の言い訳なんて全く信じてなさそうに訝しげな顔をしていたのに。
突然、わたしの後ろの方を見ると、納得したように頷いた。