“嘘だろ…?”
俺は目を疑った。さっき会いたいと思っていた親友が、平民の俺からしてみたら手の届かない幸せの高級車から降りてきたんだ。
彼女は昔と変わらない、小柄でふわふわした人形みたいな女の子だった。ハーフだってわかっていながらも、整ったその顔立ちに何度ときめかされてきたことか。でも彼女は元読モ。俺とは縁の遠い人となってしまっていたのも事実で、俺は嬉しいけど寂しい、複雑な気持ちになっていた。
たぶん、俺の心の中にあったもやもやは彼女がその転入生ならという願望からかもしれないと思うことが出来た。理由は簡単で、単純だった。彼女の姿を見た瞬間、胸が高鳴って、すっと気持ちが晴れたからだ。例えるなら…、そうだな…。長い梅雨の時期が開けた感じだろうか。とにかく、すごく気持ちがすっきりして、明るくなったんだ。
何を話すとかはなかったけど、彼女と何か会話をしたかった。彼女が俺のそばを離れてから、こんな清々しい気持ちになったのは初めてだった。だから、この気持ちを彼女に伝えたかったんだ。
こんな俺にだってプライドは一様ある。だから遠巻きに、この気持ちを伝えたかった。でもそれを考えると、無意識の内に喋ることが出来なかった。俺のことを忘れているんじゃないかとか、覚えていたとしても子供みたいだと呆れられるんじゃないかなんて思いが、俺の中に重くのし掛かって来たんだ。
それを思うと、もっと話しかけることが出来なかった。彼女に嫌われる勇気は、俺の中にはなかったから…。
“あ…”
噂をすれば影とはこのことなのかな。車を降りて前を見たら、会いたいと思っていた彼がいた。でも一人で思い上がるのは嫌だったから、運命の出会いじゃなく、いたずらとして考えることにしてみた。
私はまた会えて嬉しかったけど、
“もし彼がそこまで嬉しくなかったら…”
そうなったらきっと私は落ち込んでしまう。そうなったら唯一の友達に面倒臭い奴だと思われて、もっと嫌われてしまう。そんな考えが頭の中をずっと巡っていた。
“嫌われたくない”
そのことだけでいっぱいだった。もう少し余裕があれば、
“彼はどう思っているんだろ?”
なんてことも考えられるんだろうけど、今の私にそんなことが出来る余裕はなくって、気持ちを落ち着けることに精一杯だった。
彼は相変わらず頼りがいがありそうで、人が良さそうな雰囲気だった。そして、そこに安心している私がいた。
